神経の治療に使う道具とは?
歯の根から神経を抜くのは、とても複雑で難しい治療です。精度を高めるためには、歯科医の技術力に加えて道具選びがポイントになります。
神経の治療に欠かせないのは、治療部位を拡大する道具です。
そこで今回は、神経の治療に使われている道具を紹介します。
1.拡大鏡
拡大鏡とは虫眼鏡のような道具です。歯科医では長時間使い続けられるメガネタイプのものが一般的です。
裸眼もしくは通常のメガネでは、治療部位の見え方に限界があります。拡大鏡では、肉眼では見えないような細かい部分を何倍にも拡大してみることができるので、より正確な治療を行うことができます。
私のクリニックでは、世界シェアNo.1を誇るアメリカのサージテル(surgitel)を導入して治療にあたっています。
2.顕微鏡(マイクロスコープ)
さらに対象を拡大して見られるのが、顕微鏡です。肉眼に比べて、3〜25倍に拡大した視野で治療を行うことが可能です。
アメリカでは顕微鏡を使った根管治療(マイクロエンド)や手術(マイクロサージャリー)がさかんですが、日本の歯科医院ではまだ一般的ではありません。
とても高性能な装置ですが、焦点を合わせるのに時間がかかる、見える範囲が狭くなりすぎるなどの欠点もあります。そのため、私のところではあえて導入していません。
道具で精度を上げることは歯科医の「良心」
長年培った知識と経験があれば、拡大鏡や顕微鏡を使用しなくても治療はできます。しかし、道具を使うことで、より深い部分へのアプローチが可能になるのです。
たとえば虫歯につめ物をする場合をみてみましょう。
肉眼で空洞を埋めていくと、ぴったりと収まらずオーバーする部分(オーバーラッピング)が少なからず出てきます。それを研磨して調整していくわけですが、重要なのは「どこまで突き詰めてやるか」です。
道具を使わなくても、患者さんの舌触りや噛み具合に違和感がないレベルまで仕上げられる。しかし私は、ほんのわずかな凹凸が気にかかります。なぜなら、将来的にそこへ汚れがたまって虫歯や歯周病になる可能性があるからです。
今の治療だけでなく、未来への予防まで見すえる。そのために道具を使って精度を上げていくことは「歯科医の良心」と考えています。