痛くなくても「虫歯」です
開業して10年。今では最初に患者さんの歯の状態を診て「治療計画」をつくるのが、私の医院のスタンダードになりました。虫歯の有無や治療箇所、費用などをあらかじめ確認するためです。
そのとき、「虫歯があるから治療したほうがいいですよ」というお話をすると、「痛くないから大丈夫ですよ」という答えが返ってくることがあります。
でも、それは大きな間違い。私たち歯科医は、本人が痛みを感じていなくても歯の状態から「虫歯」と診断します。
痛みを感じない場合は、歯を削って治療する必要のない初期の段階である可能性が高い。ただし、歯磨き指導や歯のクリーニングなど、歯を削らない処置をして経過観察をします。
こうした虫歯を「要観察歯」と呼んでいます。要観察歯となる虫歯の初期段階には、次の2つのステージがあります。
要観察歯
1.「CO(シーオー)」=初期虫歯 ※イラストがあれば挿入
虫歯ができると、最初に歯の表面が白く濁り、エナメル質の透明感が失われます。これが「CO(シーオー)」と呼ばれる「初期虫歯」の状態です。
このCOという言葉、小さい頃の歯科検診で耳にしていませんでしたか。COの「O(オー)」は「Observation(観察)」の「O」。つまり要観察歯のことを示しています。この状態では痛みを感じることはありませんが、立派な「虫歯」なのです。
2.「C1(シーワン)」※イラストがあれば挿入
COからさらに虫歯が進行すると、歯の表面にある「エナメル質」が少しだけ溶けはじめます。歯の色は白く濁った状態から、茶色っぽく変わり、さらに虫歯が進行すると黒っぽく変色する。これが「C1(シーワン)」の状態です。このステージでも痛みを感じることはほとんどありませんし、他の症状が出ることもありません。
痛くない虫歯こそ治療のチャンス
さらに虫歯が進むと「エナメル質」が溶けて、その内側の「象牙質」まで到達します。これが「C2(シーツー)」の状態です。こうなると初めて痛みやしみを感じます。
初期虫歯の状態なら、歯を削らなくてもいいし痛みもありません。「痛くないから大丈夫」ではなく、早期に虫歯を発見して治療をするのがベストです。
C2以降については、また次回お話ししましょう。